衝撃の瞬間

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スコアボードは、前日とまったく同じだった。2回表と3回表にドラゴンズが1点ずつ取る。先頭打者の四球と二死からのタイムリー。井川同様、安藤も制球の割に球の走りは良く、最少失点で踏みとどまる。4回裏にタイガースが反撃開始のソロHRで1点。そしてこのソロを打つものが最終的にヒーローになるところまで同じ。前日は矢野、この日は鳥谷。ついにインハイの直球をハードヒットした。オープン戦開始当初の打撃だ。
ただし前日と違っていたのは、逆転打が出るタイミング。この日、5回裏は同点止まりで、ヒーローの一打が出たのは、夜中11時寸前のことだった…。
勝つと負ける、勝つと分けるでは大違い。もし分けたならタイガースナインは早々にベンチを引き上げる「敗者の退場」、ドラゴンズは握手で締める「勝者の儀式」を行うところだった。
「浮上のきっかけになると思うよ。この負けは」という落合監督の呪文に、まだどれだけの魔力が残っているか。
5回2失点の先発安藤を、気迫のブルペンが繋いだ。橋本、ウィリアムス、藤川、久保田、江草。特に最後に投げた江草は短い投球間隔で、相手打者にゆとりを与えず、勝つリズムを作った。「ボクだけが、打たれるわけにはいかんでしょう。みんな頑張ったんですから」という言葉通り気持ちの入った投球に、3勝目のご褒美がついた。
一方、ドラゴンズも先発川上の後を、岩瀬、高橋聡、川岸、平井と小刻みに繋ぎ、阪神打線に的を絞らせなかった。バックの好守もあり、緊張感のある締まったゲームだった。
引き分けの気配濃厚となった12回ウラ、しかし赤星は、(引き分けではダメだ)と塁上からメッセージを発し続けた。この日もしばしば打撲の患部を気にする素振りを見せた。一死からヒットで出塁すると、2球目に相手投手のマークをかいくぐって好スタートを切るが、鳥谷ファール。この場面、打撃に集中する鳥谷に、赤星のスタートを確認させるのは酷な話、致し方ない。当然バッテリーは盗塁をさせまいと、牽制球を3度繰り返した。しかし赤星の帰塁動作がおかしい。いつもなら余裕で足から滑り込むところが、倒れ込むように手から帰塁すると、その度にゆっくりと立ち上がった。表情には見せなくても、痛みに耐えながら無理をして大きいリードを取っていることがわかった。本当はもう盗塁を試みることはできなかったかも知れないが、以後バッテリーは、勝負が決まる7球目まで鳥谷に直球を投げ続けることになった。
(引き分けではダメだ)。その一部始終を見ていたスタンドのファンは、タイガース・ナインは、打席の鳥谷は、赤星を絶対にホームに返すのだと心に決めただろう。150km/h前後の平井の速球に鳥谷は押されていた。しかしコースをしっかりと見極めながら、少しずつタイミングを修正した。カウント2?3、6球目の直球、赤星スタート、ファール。赤星の目が虚ろになっているように見えた。7球目、真ん中高めの直球、鳥谷のバットに迷いはなかった。真っ直ぐに振り下ろした両の拳、微動だにしない頭と右肩、バットのヘッドは上向きの角度を維持したまま、最高速でボールを打ち抜いた。良い角度で上がる…。レフトポール際、切れるか?入るか?しかし、驚くことにボールはまったく切れる素振りを見せずにどこまでも伸び、レフトスタンド上段に吸い込まれていた。あくまでも真っ直ぐに、ことによるとわずかにドロー回転していたのかも知れない。
ある人はこの打撃技術のことを「レフトに流すのではなく、レフトに引っ張る」と言った。そんな打球を甲子園のレフトラッキーゾーン、レフトスタンドに数知れず叩き込んだ掛布雅之氏の言葉だ。インパクトの瞬間のリプレイを見ていたら思い出した。

コメント

  1. さあ君がヒーローだ?!鳥谷 敬?!

     ←去年もらった鳥谷さんのサイン <阪神?中日8回戦、大阪ドーム、4勝4敗>    1 2 3 4 5 6 7 8 9101112 計 中日 0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 阪神 0 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 2X 4 勝)江草(3勝1敗) 敗)平井(2勝2敗1S) 本塁打 [ 阪神 ] 鳥谷 2号 4回ソ

  2. ジュン より:

    鳥谷選手、やりましたね?☆
    守備面でも成長して、打撃面でも絶好調ですね。
    このまま、好調を維持してチームに貢献して欲しいですね。

  3. 阪神タイガース!強し

     昨日の中日戦は延長12回で引き分けになると思ってたら、土壇場で鳥谷の一発が出て、さよならになった。阪神強しである。阪神のお陰で、気持ちよく眠りにつくことができる。今日はどうかな?

  4. ichiken より:

    鳥谷の積んでるエンジンの排気量のデカさを感じる試合でしたねぇ。
    良かったぁ。
    あと、江草の異様に早い投球間隔が良かったす。
    そろそろ球児を休ませてやって…。

  5. ヤマカズファン より:

    鳥谷が本当の意味でヒーローになったのは
    初めてではないでしょうか?
    ニューヒーローの誕生を祝いましょう。
    toraoさんのおっしゃるように、最後の一打は
    鳥谷が掛布に見えた一瞬でした。
    追記
    藤川投手のスライダーの件、さすがtoraoさんの観察力+情報網ですね。
    感服いたしました。
    本人もあのフォークでは満足いかないでしょうから、いい変化球が欲しいんでしょうね。

  6. おかぼん より:

    レフトスタンドにまっすぐ伸びていく掛布の打球,きれいでしたねー。
    ここのところの鳥谷の攻守にわたる輝き,辛抱して使ってきた監督に応えるいい働きです,まだまだ進化しますよ。
    「落合妖術」を解くためにも,こうなったら今日もぜひトリタニ(とりたい)!
    で,やっぱり6番はスペンサーなのかな?

  7. ばかぼん父 より:

    「らしい」中日に、競り勝ったことは立派。鳥谷は上位で光ってますね。
    HRを打ったのは鳥谷だが、打たせたのは赤星だ。鳥谷がファールしてしまったが完璧なスタートを見せたことで、ホームに投げるより1塁への牽制が多くなり集中力が乱れる。谷繁のリードも送球しやすい外の速い球一辺倒になった。得意の外角球の直球ばかりを見て、ファールを打ちながらタイミングを合わせて、最後に高め来た球を完璧に捕らえた。一撃で捕らえたのではなく、調整しながら最後に叩き込んだのは、偶然ではなく必然に近づけていったということ。
    ランナーが盗塁でスコアリングポジションへ進む能力のある赤星以外なら、サヨナラHRはでていない。
    サンスポ紙上で福原コーチが「赤星が出てくれて、鳥谷の配球も変わったんちゃうかな」と今更の暢気なコメント。
    「そうだよ、変わるんだよ!」だから盗塁できる代走要員を上げたらどうよ。w
    なにはともわれ、みんなが勝つための仕事をした、ナイスゲームでした。

  8. 決めた!勝利をトリタ?ニ

    昨日とおんなじ様な感じで始まった序盤。安藤が2・3回と1点ずつ取られて迎えた4回裏。反撃の狼煙を上げたんはトリタ?ニの1発 初球のストレートを見事に捕らえたで!!リーグ戦に戻っても好調やし、それにこれこそが本来期待してたトリターニの姿やろ!!7回、ハ

  9. テド より:

    赤星がいなかたっら、鳥谷のサヨナラは生まれてません
    まるで、赤星がボールに乗り移ったかのようにスタンドに
    吸い込まれていきました。
    ホームでトリーのユニを脱がせる権利は赤星にあったんですね。骨折した所の骨は頑丈になるように、赤星の痛いとこも、前より頑強になりますように。
    吉竹が走塁ミスしなかったら、4時間半も試合しなくて
    よかったのに。

  10. torao より:

    代表より鳥谷(笑)。
    to ジュンさま
    順調にばかりも行かないでしょう。上がったり下がったりを繰り返しながら少しずつ。見守る方もまだまだ辛抱ですよ(笑)。
    to ichikenさま
    排気量ね、上手いこと言いますね。ここへ来てやっとシャーシーのバランスが取れて来ました。
    江草は「ほら、どうせ打てないんだから早く!早く!」って感じでした(笑)。
    ブルペンにも「上がり」作ったら良いのにね。
    to ヤマカズファンさま
    誕生しましたね、おめでとう!(笑)。あとは着実に育てないと。掛布に見えましたよね?
    あれだけのストレートがあれば、カーブと2球種でも1イニングなら大丈夫なような気もするんですけどね。
    to おかぼんさま
    掛布のレフトHRは、左手の返しが強い独特の打法でした。
    ああ、なんかとても幸せでしたよ。昨日のサヨナラは。
    スペンサー?浅井?豊?町田?あえて桧山?誰でもいいですよ。甘い球をひっぱたくだけですから。
    to ばかぼん父さま
    >みんなが勝つための仕事をした、ナイスゲームでした。
    これにつきるのではないでしょうか。流れから行くと、9回裏で勝っておかないといけなかったかもしれませんし、失敗もあったかも知れませんがおかげでこの結末ですから。こういう試合って必要ですよね。
    ただ赤星にダメージを与えてしまったとするなら、そうも言っていられないのですが…。
    to テドさま
    「サヨナラの脱がし」はいつから始まったのかなぁ。嬉しいのはわかるけど脱がさなくても良いと思うんだけど(苦笑)。
    赤星は脂肪がついてないから、打撲の衝撃も大きそうです。おかわりくんなら、ぽよーんで済むんでしょうが。
    吉竹コーチが止めて、点が入ったかどうかはわかりませんし、少なくともあの中継プレーにたずさわったドラゴンズの選手たちは、ちょっとでもミスしたら負けという、ものすごくドッキドキだったことは間違いないですよ。つっこませてアウトには比較的寛容な私(笑)。

  11. 昨日はもう諦めて寝かかってましたよ、どうせ同点だろ?って。
    一気にびびらされましたね。
    ずっと開幕から重い荷物を背負ってきたトリーが、
    この一打で、荷物ごとボーンとすっとばして、
    明日からは軽々とプレイして欲しいです。
    これからが本当のトリーになるのかな。
    なんか表情も出てきて、
    人間らしくなってきました(笑)
    今日が肝心かな??
    勢いでいけそうな気がしないでもないな?♪

  12. と、鳥谷が(涙)。。。

    泣けるね。とても嬉しい。何がって、鳥谷が初めてさよならホームランを打ったから! …

  13. ナイスバッテイングだ、鳥谷選手!!!
    あの打球が切れないのは、確かにこすっていないってことですね。押し込む力が有るんだ敬は・・・
    1番の復刻ユニを買って、球場にも行きました。
    買って良かったです。

  14. さぁ君がヒーローだ!鳥谷敬!

    注目の龍虎決戦第2戦は、ドンタコスはエースのバースディ川上。
    一方のタイガースは毎度投げてみないと調子の読めないアンドゥ?。

    正直もうね、内容的には完全に負けてましたね。
    同点で延長になったのが不思議なくらい・・・

    川上の変化球にはまったくタイミ

  15. torao より:

    はー眠い眠い(苦笑)
    to ちょびうささま
    鳥谷は今日も3安打。乗ってきましたね。福原には勢いも関係なかったかな(泣)。
    to 埼玉猛虎会さま
    ようこそお越し下さいました。
    上と下がうまく連動するようになって、ようやく飛距離が出るようになりました。努力家のようですから、自然と応援したくなります。

  16. TigersReview より:

    藪の後継者か、福原?6/23、阪神3-9中日

    いきなり三者連続四球の福原。それも久々の今岡のセンター前で先取点を取ったその矢先。昨日の安藤といい先発がどうもピリッとしない。先発投壊はデータにも如実に現れていて交流戦36試合で中継ぎ(2番手)以降が実は8勝もしている。しかも今までは表ローテ3本、裏ローテ

  17. 中日戦(8回戦)

    4対2 勝利♪先発の安藤が2回に先制され、3回に追加点を入れられた。4回の鳥谷のソロと、5回の藤本のゲッツー崩れで追いついき、延長12回、1死1塁で鳥谷がサヨナラ2ランホームランを放った。打○鳥谷・2号ソロ・3号2ラン投○江草・3勝1敗(安藤・橋本・

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