エース

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かつての奪三振王でも、最近の井川は三振の山を築くというような投球はなかなかない。この日10加えれば、通算1000奪三振を記録するということだったが、正直期待薄だと思っていた。


立ち上がりの井川はやや乱れていた。先頭の緒方に対して、腕はよく振れているが、直球、チェンジアップとも高く抜けてしまう。最後ど真ん中の直球を左中間最深部まで運ばれたが、フェンス前ぎりぎりで追いついた金本の好捕で一死を取る。いちばん初めのプレーだから、流れを変えたとは言わないが、この試合の流れを作った大きなプレーだった。
続く前田には辛抱強く対処した。矢野は緒方への4球目、スライダーが鋭く曲がり落ちたことを見逃さず、たんねんにスライダーを低めに要求した。最後の抜けたような高めのスライダーをストライクとコールしてもらえたのはラッキーだった。ラジオで聴いたことだが、今季若手のセ・リーグの審判は、意識してストライクゾーンを広く取ろうと試みているという。スピーディーな展開を作って行くためには良策だと思う。この日球審の杉永氏は45歳だから若手ではないが、キビキビとした甘めのジャッジは良かった。
キビキビと言えば、井川も意識的に投球間隔を短くし、どんどん打者を攻めていく姿勢を見せた。それが序盤からの援護に結びついたのだと思う。
確かにカープ打線に元気がないというのはある。ボールの見極めが悪く、振り出したら止まらない。そこで矢野はスライダーのキレが良いことを活用した。そのフォークのように鋭く曲がり落ちるスライダーを多投することで、高くなりがちだった直球に的を絞らせなかった。そうしているうちに直球も低めに決まるようになっていった。
6点のリードとなった5回は、丁寧に直球を低めに集めることだけに集中させ、楽な投球が軌道に乗ったかに見えた。だが上位に回った6回は体力的にもいちばんしんどいところになった。四球とヒットで二死一二塁、打者は栗原。ここで井川はギアチェンジして、強い速球を続けざまに放り込んだ。そしてしっかり攻め込んでおいてから、チェンジアップで前に揺さぶり、落差の大きいスライダーで振らせた。ココイチで見せる馬力も戻って来た。これで奪った三振は8、あと2つだ。完封と記録達成で甲子園初勝利を飾りたい。
しかし7回は凡打三つ。8回は四球2つで一死一二塁、不調に悩むとはいえ昨季の本塁打王新井が相手。最後はこの日ほとんどなかった逆球の直球で詰まらせたが、弱々しいゴロが三遊間へ、これを鳥谷が俊敏にさばき、6?4?3、関本からの送球はショートバウンドになったが、シーツはいつものように涼しい顔でひょい。詰まったスイングで新井のスタートが遅れたこともあって、一塁もアウト。驚きの表情を浮かべながらグラブを叩いてバックに感謝する井川。去年、この本拠地甲子園球場でも、そのグラウンドの上でも、どこかチームのみんなとは違う場所にいたような、そんな井川はもういない。なぜ投げているのか、自分でもわからずに投げているような、そんな井川はもういない。
これからのシーズン、打たれることもあるだろう。でも、そこにいるのは、いつでも、目の前の打者から三振を取ることを考えている、阪神タイガースのエース井川慶だろう。
奪うべき三振はあと2つのまま、最終回へ。嶋は凡打で一死、後がない。ストライクを取りにいくところを栗原、福井に連打され、一死一二塁。完封もしたい、三振も獲りたい。この日の井川を支えた、直球とスライダーで倉を空振り三振。そして合っていない梵には徹底的にスライダーを連投、ここまで来たら矢野も本気だ。最後のチェックスイングに、クルクル手を振りながら一塁塁審を指さす矢野、塁審佐々木もわかったもんで、オーバーアクション気味にストライクコール、本当は全然振ってないけど(笑)もう流れだからあきらめてね。
甲子園に矢野の笑顔が戻り、ナインの祝福、監督が花束を渡す女性スタッフを促す、花束を受け取り、高く掲げながら誇らしげにスタンドに顔を上げるエース。お尻のポケットは、これまた誇らしげに記念のボールでふくらんでいた。

コメント

  1. シグナル より:

    井川くん、変わりましたね。肝心な所で負ける井川くんを去年繰り返し見せられたから、なおさら嬉しいです。今年のタイガースは去年よりも強いかもしれないと思い始めています。

  2. おかぼん より:

    >金本の好捕
    井川のコメントにも,「あれが抜けていたら違う展開のゲームになっていたかもしれない」とありましたが,甲子園で,チーム一体となった勝利に貢献したということで,昨日の井川の投球の価値はまた特別と思います。
    「去年は井川で負けて下柳だったけど,今年は違う」監督のコメント,まあそのまんま(笑)。
    確かに今のカープは投打ともに精彩がないが,井川が取り戻した流れにのって,今日もすっきり勝ちたいですね。(天気はすっきりしていないようですが…)

  3. kaleido より:

    最後のは完全に審判が空気読みましたよね。
    あれをセーフってやってたら、ボブ扱いされたでしょうw
    井川のスライダーは、安藤のような横滑りではなく、カーブみたいな軌道を描きますよね。
    10個の三振の内、8個は変化球だったそうです。
    まぁストレートの走りもよかったし、あれだけ右打者にクロスファイアーがズバズバ決まれば、矢野もリードしてて気持ちよかったでしょう。
    それにしても、今年は試合時間が明らかに短くなってる気がしません?
    来期から投球間隔も20秒から12秒に短縮されるとか、いろいろ規則を変えていくそうですよ。
    http://www.excite.co.jp/News/sports/20060414190700/20060415M50.030.html

  4. 阪神7?0廣島 井川1000奪三振!

    井川がエースの仕事を果たして、聖地での今季初勝利!
    六甲おろしの大合唱が甲子園にこだました。

  5. NANCY より:

    まずは井川投手、1000奪三振おめでとうございます。
    toraoさんが書かれていたようにチームの一員として野球やってる雰囲気がありました。
    前回登板時、野手の頑張りで勝ちを貰ったことについて感謝している云々のコメントをどこかで読みました。
    今までだって、つまり昨年だって助けられた事はあっただろうに・・・敢えて今年はそんな当然な事に気づく井川投手に変わった気がします。
    しかし、連敗の癒しはエースと言われる人の快投に限りますね(笑)
    出来れば今日も試合が見たいな?。

  6. 今年のイガーはちと違う

    2006年4月14日 対広島3回戦 C●0?7T○
    勝 井川3試合2勝1敗/敗 大島2試合2敗
    11試合6勝4敗1分 勝率.600 3位
    阪神マジック 126(138)/1位(巨人)のマジック 124(133)

  7. 昨日、寒い中ご観戦の皆さんおつかれさまでした。
    虎キチぴ?ぷる団体観戦2試合目にして、早くも不敗伝説誕生か?
    自分がTVで見始めたのは、8回表のあたりからですが、井川気合はいってましたね。。。
    その調子で来週の東京ドームもよろしく。。。
    それにしても、NHK BS-Hi
    今年最初の六甲颪フルコーラスをそのまま中継!
    あっぱれです。。。

  8. 【お帰り甲子園に:井川完封1000奪三振】☆6

    勝利はアニキの世界新達成以来ですよ!
    長いトンネルのようでした(笑)

  9. ますとら より:

    昨日春冷えの甲子園で偵察してきました。あんなにビールが売れてない甲子園もひさしぶり。
    それを察してか、エースの自覚か、井川さん見事なピッチングでした。打線もアンディの中押し、アニキのダメ押しもあったおかげで、体を暖めながら観戦することができました。
    後は今岡、矢野両名の復活ですね。今岡元会長は2打席目(サードライナーだったけど)まではそこそこよかったように思いますが、速球主体の投手には打ちあぐんでいるようですね。
    矢野さんはリードに忙しいこともあるんでしょうが、ゴロ打ったところで走れていないのが少々気になりました。気温があがってくれば、調子も上がってくれるように期待しています。
    今朝関西テレビの番組で広沢氏が能見投手については、投げ癖を見抜かれて球種を読まれているのではないか?発言していました。用意ではないでしょうが、原因が分かれば、復活の日は近いかな?

  10. 井川今季初完封・通算1000奪三振

    井川が今季初完封。

    そして通算1000奪三振を達成した。

    金本に続く偉大な記録。

    この日は二桁10奪三振を奪う快投だった。

    昨日の試合は対広島戦。

    終わってみれば、7対0の圧勝だった。

    打線もよくかみ合い、井川は完璧なピッチング。

    もう何も言

  11. エースの貫禄

    広島戦 7?0○ ?阪神甲子園球場?
    井川がエースの貫禄を見せてくれました!

    先発は井川、広島は大島のサウスポー対決となりました。

    初回、対象的な立ち上がりとなりました。井川は新井にデットボールを許すも難なく押さえます。

    一方、大島は虎打線にや

  12. いわほー より:

    「(甲子園は)相性が悪かったけど、ホントに良かった」とは、井川のコメント。
    (甲子園は)→(甲子園のファンとは)?
    そんな勘ぐりも吹き飛ばすくらい、胸のすく井川のピッチングでした。去年とは一皮向けたようですね。次のG戦の登板が楽しみだ。(ああ、ベイスターズ惜しかった・・・。)

  13. 今季の井川はやってくれる(はず)。
    その一発目として、次の上原とのマッチアップで、投げ勝って欲しい。
    強力G打線を1点に抑えたのは、天敵土肥とエース川上の2試合だけ。後は5点以上とっている。
    井川がGを最低8回2点までに抑えてくれるようなら、シーズンを戦う「軸」となりそう。

  14. よそゆき より:

    甲子園に行ってきました?。
    ひっさしぶりに行った甲子園でいい試合を見ることができました♪
    だ・け・ど、、
    WBCの優勝トロフィーが甲子園に来てたんですね…。
    http://osaka.nikkansports.com/baseball/professional/tigers/p-ot-tp0-20060415-19300.html
    せっかく行ったんだから、見とけばよかった・・(T_T)
    情報収集をおこたりましたワ。

  15. な?んか、最近結構しら?っと
    試合を見ている自分がいたけど、
    井川が1000奪三振したのは
    おお?と思いましたね。
    でも出来れば強い相手からもぎ取って欲しかったなあ?という贅沢な気持ちも。
    今日は雨でみんな寒そう?。
    そして私には天敵のデイゲーム。最後まで見れるかしら・・・(笑)

  16. でんまん より:

    いや? 酒がうまかった。
    最後のシーンは思わず吹いちゃいました。梵クンごめんね!
    それからシーツ、去年みたいに突然止まらんとってや! (今ぐらい打たんでエエから 秋までコンスタントに頼んます?。)

  17. 雨の中、虎、広島に快勝。

    朝から小雨が降っており、試合の有無が心配しましたが、雨の中決行されました。
    雨の中でも4万8千の観衆
    広島・佐々岡、阪神・安藤の先発で始まりましたが先行したのは広島、2回に1点を入れられましたが、すぐその裏に浜中の6号ソロで同点にし、3回にもシーツの

  18. 西田辺 より:

    ああいう場面って、審判も記録が絡んでるのは
    分かっているんでしょうか?
    「ん?何か矢野必死だな。ま、いいやスイング?!」
    って感じでしたけど(苦笑)
    ま、絶妙に球場の空気を呼んだ判定と言うことで(笑)
    右打者の懐に飛び込むクロスファイヤーが抜群でしたね。
    精彩を欠く広島打線とは言え、随所に「井川らしさ」
    を出せた試合でした。
    やっぱ、井川はやれば出来る子(笑)

  19. torao より:

    今日は雨の中観戦された方も多かったんじゃないでしょうか。お疲れ様でした。
    to シグナルさま
    井川が変わったから井川を見る目も変わったのか、井川を見る目が変わったから井川が変わったのか…。
    >年のタイガースは去年よりも強いかもしれない…
    それはどうかな(笑)。でも可能性はありますよね。
    to おかぼんさま
    去年は、4番の一発がチームに勇気を与え続けてくれましたね。今年はエースの力投が…となれば言うことありません。
    to kaleidoさま
    >井川のスライダーは、安藤のような横滑りではなく、カーブみたいな軌道…
    スライダーとカーブってのは線引きが難しいですよね。私的定義だと、明らかにリリースポイントより高いところを通って曲がり落ちるのがカーブかな。本当はどうなんでしょうね、教えて!野村スコープな人!ってそんな人はいないね(笑)。
    チェンジアップをあえて少なくすることで、余計にチェンジアップを意識させる矢野のリードは巧みでした。
    投球間隔は計時係をどうするかが問題です。それと遅くなるのは主に走者がいる時ですもんね。やっぱり総守備時間の多少によって勝負に影響するようなルールがあるといいと思うんですけどね。
    to NANCYさま
    井川は何も変わっていない。今まで誤解されていただけだ…という意見もよく聞きます。例えば報道陣との関係が悪くなれば、伝え方も違ったりしますからね。色々なことがあってのことだとは思いますが、井川の根本はずっと変わってないんじゃないかなぁ…というのが私の推測です。
    to スーパーサウスポーあさちゃん。さま
    >…あっぱれです。。。
    さまざまな問題を抱える公共放送としてどうなんでしょう…。Tファン以外にとったら、どう見えるんでしょうねぇ…。
    to ますとらさま
    ずいぶん寒かったみたいですね、お疲れ様でした。
    やっぱり矢野は走れてないですか。寒いから無理してないというだけなら良いんですけどね。
    といっても所詮、能見は直球とスライダーの投手。それぞれのボールを自信持って投げられるかどうかなんだと思います。
    to いわほーさま
    >「(甲子園は)相性が悪かったけど、…」私もぎょっとしましたよ(笑)。本拠地に相性うんぬん言う人初めて(笑)。
    to ばかぼん父さま
    Gは笑っちゃうくらい強いですね。もちろん原采配の素晴らしさ、チーム作りの正しさもあるのですが、世論の後押しというか、そんなものも感じますね。でも故障者もかさんできて、かなりいっぱいいっぱいな雰囲気もあるような…。
    to よそゆきさま
    ああ、そうそう。WBCのね、そうだった。自分が神宮で見て来ちゃったもんだから…(笑)。
    to ちょびうささま
    >な?んか、最近結構しら?っと…
    これ、多かれ少なかれみんな(選手も含めて)そうなんだと思いますよ。だから連覇ってのはなかなか出来ない。どこかで「ま、いいや」が顔を出しますからね。燃え尽きちゃいますって、普通。これをなんとかするには、並大抵じゃないダマシのテクニックが必要だと思います。落合監督をもってしても出来ませんでしたからねぇ…。
    to でんまんさま
    すっかり「酔っぱらいキャラ」(笑)。シーツは、いいんじゃないですか?やっぱり春先絶好調な人って貴重ですもん。止まったら止まったでどんどん替えていけば良いと思うんですよ。
    to 西田辺さま
    クロスファイヤーはもちろんこれまでも組み立ての中で中心的でしたが、アウトローの直球をある程度要求したことで、また幅を広げていました。直球がインハイとアウトロー、変化球が逃げるチェンジアップと、食い込むスライダー。これで相当打者は的が絞れなくなりました。

  20. あらんじ より:

    あー、本当に昨日行ってよかった・・・。(しみじみ)
    ピンチにギアチェンジして三振を奪う井川が戻ってきましたね!
    昨日はとにかく2ストライクまで行ったら三振取ってくれ!って願ってたので、8回のゲッツーとか「あ?あ・・・」って感じでした(笑)。
    9回も、ヘタにバットに当てられるくらいならヒット打たれたほうがマシだなんて思ってましたよ。
    ドラマみたいに最後で決めてくれて、しかも完封。
    私にとって忘れられない試合になりました!

  21. torao より:

    to あらんじさま
    あらんじさんが行っていて良かった!本当にそう思ったよ。チームが苦しい時、エースの仕事をしました。ナイスゲームでした!

  22. 中目虎 より:

    先発が踏ん張ってるうちに、
    ブルペンの再整備をしてほしい。
    いまのメンバーで接戦を闘えるのでしょうか。
    まさか気長にジェフ待ちなのでは…
    と、不安だ。

  23. torao より:

    to 中目虎さま
    >ブルペンの再整備…
    配置転換、一二軍入れ替え、外国人補強、トレードなどがその内容でしょうか。なんかどれをやっても上手くいきそうにないような気がするのは私だけ?(笑)
    使う側、使われる側とも、もうちょっと上手くなればいいんですけどねぇ。

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