スポーツを支えるということ

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特待生制度についてまた書く。


検索エンジンで「特待生 悪い」で検索すると、10万件以上がヒットする。これについて意見がある人がいかに多いかがわかる。
先日も言ったことだが、私は高野連による野球特待生制度禁止強化の動きを好感している。ただ高野連がどれほどの理念と決意を持って、今回のドタバタを演じているのか、その先に何を目指しているのか、皆目わからんということについては、「どこが悪い?」派の方と同じなんだけどね。
おそらく高野連の思惑は、とりあえず身を清めて夏の大会を乗り切ろう程度だと思うが、この動きから大きく流れが変わってくれることを願っている。
甲子園(高校野球)というシステムが日本の野球を特別にし、ハイレベルな日本の野球の根底を支えて来たのは間違いない。しかしその能力がいかに高くても、「あくまでも教育の一環」というタテマエを崩さず、それによって学校も指導者も「野球指導のプロフェッショナル」としては社会に認知されず、そのギャップを埋めるために「裏金」が動くという存在では現代の価値観にそぐわない。いや露骨な表と裏があっては嫌われるというのは普遍的なことか。
学校が生徒をスカウトして、お金を積む。甲子園で有名になって学校も潤う。いいじゃないかと言ってしまえばそれまでだが、双方がタテマエと違う、不健全なバーター取引を行うというところに問題がある。バーター取引も、悪代官と越後屋がやる分にはかまわないが、学校と生徒の間のバーター取引というのは、社会的認知は得られない。
もともとビジネスとして成立しないような他の競技では、こういうことは起きない。しかし野球の周辺には、常にこんなことばかりが渦巻いている。その繰り返し繰り返しによって、「野球な人」と「野球じゃない人」の間にくっきりとした境界線ができてしまう。野球な人にはメリットがあっても、野球じゃない人には不愉快なことしかないのだから。本来スポーツは、罪のないもの。余暇を楽しいものにすることはあっても、人を不愉快にするようなものであってはいけない。「野球だけは特別」でやっていると、「野球だけは許せない」になりかねない。またこういう野球型システムが、他の競技にも広まるようでは、「スポーツな人」と「スポーツでない人」の対立となり、「スポーツなんてクソくらえ」という声になってしまう。
私がご覧のとおりのタイガース馬鹿でいられるためには、野球がいつまでも存続してもらわなきゃ困るし、野球に限らず、スポーツが社会の中で愛される存在であって欲しいと切に願っている。だから変わっていって欲しいのだ。
そこで今回の高野連の動きがどういう影響を及ぼすか。ひょっとしたら少なからぬ影響があるかも知れない。
一例をあげてみる。勉強は苦手だけど、野球の実力は将来プロ級、家庭は経済的に恵まれない中学生A君がいるとする。今までだったら野球で有名な私立B高校から上げ膳据え膳で迎えられたであろうが、特待生禁止が厳しくなって、それがなくなってしまった。
この状況について意見を求めれば、議論百出になると思う。で、私の意見。どこに問題があるのかというと、せっかく将来プロになれるだけの野球の力を持っているのに、B高校に行けないばかりに正しい指導を受けられないというところなのだと思う。でもさ、総合的な教育機関である一高校に、プロ野球選手になるための指導をまかせちゃっていることがスポーツ振興的には問題なんじゃないのかね。学校は教育を施すのが仕事。スポーツ選手の育成やスポーツ振興はそれを仕事とする機関(地域クラブ)があれば良いだけのこと。現在高校野球で活躍する優秀な指導者は、地域クラブでそのプロの力を発揮するべきだし、優秀なプロ野球選手が生まれることで得をする人たちは、そのクラブを全力で支援すれば良い。A君、クラブで一緒懸命野球を練習しよう。そして社会にはいろんな人がいるということと、一般教養を身につけるのはプロ野球選手にも大切なこと。公立高校で勉強もしっかり頑張れ。
そういう健全な姿に変わっていく一石になれば良いと思う。現実はもっとひね曲がっていくのだろうが…。
今後の方向性として、ユース&ジュニア育成はプロフェッショナル組織(地域クラブ)に移行して行くことがあるべき姿だと思う。学校は教育活動に、企業はビジネスに専心すること。それらがスポーツを通じて地域新興に貢献したいというのなら、地域クラブの活動を支援することで、地域社会の支持を得たら良い。スポーツを食い物にするのではなく、スポーツに与えることで名を上げ、支持を得るようにね。
Jリーグが掲げる「豊かなスポーツ文化の振興及び国民の心身の健全な発達への寄与」という理念に、規模が他の競技をはるかに凌ぐ野球界が賛同し、力を与えれば、日本のスポーツ文化は劇的な変化を見せるだろう。

コメント

  1. 徳名 より:

    なぜ、今頃さわぐのかわからん。
    特待生制度がなかったら、私学経営は
    苦しくなる。
    一般生徒だけでは、集まりにくい。
    弱者のねたみか?

  2. asamo より:

    私的な意見ですが
    確かにtoraoさんの意見もわかりますが
    野球以外では特待生がないというわけではないので
    野球から別の競技に人材が流れて
    野球は才能のある人材もへり適切な
    指導もうけられなくなり
    かなり危うくなるのではないかと思います。

  3. あーちゃん より:

    toraoさんのおっしゃるJリーグ方式は理想ですね。私も常々そう思ってます。
    先日某Jリーグチームの運営氏と話す機会があったので、「野球チーム作れ! 独立リーグに入って、ジュニアからユースも作れ。最後はユース年代の全国大会だ。あそことあそこを巻き込めばできる!」と焚きつけておきました(笑) 
    何人かの社長は、話の持っていきようではその気になりそうな気もします。何といっても、高校野球の注目度は常々サッカー界では羨ましがられていますので。
    日本の野球界の構造における根源的な問題点のひとつが、「高校野球以外に専門的に野球をやる場所がない」ということだと確信しています。
    「高野連」は「独占企業」なんです。だから、裏取引も価格吊り上げもできれば、イザという時には自己保身のために法律も社会通念も無視して一方的な通達も出せる、と。ほかに野球をする「場」がない学校も指導者もコーチも、裁判に訴えれば勝てそうな事例でも、泣く泣く従うしかないわけです。
    せめて、「高校」以外で15?18歳の少年が野球を出来る「場」を作ってほしい。独立リーグにユースチームができて公式戦ができるだけでも、いや、独立リーグに18歳以下の少年が出場できる規定を作るだけでも、高野連の独占体制に風穴があくと思うのですが。
    でも、「スポーツ特待生制度」については存続させるべき、と思います。野球に限らず、A君のようなケースで特待制度の恩恵を受けて大成した選手は何人もいます。高野連の自己保身で、経済的に恵まれない選手を救済する方法までつぶすべきではありません。
    「免除していいのは入学金と学費と活動費(遠征費とか用具とか)のみ、その他の経費(食費とか)は要返済、それ以外の裏金は発覚したら一定期間(2年以上)の資格停止」というような明確なルールを作れば裏金にも歯止めがかかるはず。
    何とかヒネ曲がらず、いい方向に向ってほしいもんです。
    毎度、長くてごめんなさい……

  4. 蒸し返し より:

    久しぶりです
    A君のパターンは増渕選手に似てますよね
    彼は公立でドラ1レベルまで成長してますし
    私としては日本の学費の高さの問題もあると思うんですが
    それ以上に貧乏人への社会保証のなさも問題かと
    日本全国に独立リーグがあって
    給料なしで独立リーグに入れるようになれば何とかなるかな

  5. 学校は教育活動に、というのは理想像。
    現実的には「塾」で学力の向上を、という世間の目があり、どっちかといえば公教育は居場所(であるからこそ、「いじめ」が問題になる)になりつつあります。
    さて、部活動を取り巻く現実といえば、運動部を担当する顧問の不足でしょうか。
    私は中途半端な立場で学校現場にいるわけなのですが、
    講師登録でも教員採用試験でも「指導できる部活動」というのを記入させられます。
    運動部の選手活動をまったくやったことのない私にとっては不愉快な質問でもあり、
    逆に経験者にとっては本務よりも部活動に追いまくられる元凶。
    スポーツクラブへの移行ができればそれに越したことないです。

  6. おんず より:

    ご無沙汰しております。
    toraoさんの仰ることはわかりますし、Jリーグ的な理想像は私も賛同するところです。
    しかし、今、本当に問題なのは特待生制度云々ということなのでしょうか?
    それよりも本来は加盟者を守るはずの組織が、その組織自体の責任を明確にせずに一方的に子供たちに責任を取らせていることではないでしょうか?
    誰も子供たちの「貴重な時間」を搾取する権利などあろうはずもありません。
    大人たちは自分の役職を辞するだけで責任を取ったことになりますが、子供たちが一つの大会に参加できないというような「成長するための時間」を取り上げることなど、何の責任の取り方でもないと思います。
    この問題は世界史未履修問題に似ているところがあります。理想も結構ですが、まずは現実に即した対応をし、その後で可及的速やかに高校野球に即した特待生制度と憲章の見直しを図るのが本筋ではないかと思います。もちろんその先にtoraoさんが仰るような理想と理念を見据えることが重要であることはいうまでもありません。
    反論があるときだけコメントして申し訳ありません。

  7. torao より:

    to 徳名さま
    私学の経営についても考慮しなきゃいけないんですね。いろいろとバランスをとらなきゃいけなくて大変なんですね。
    to asamoさま
    なるほど。ただ高野連の「付け焼き刃」でも、野球だけに限らない「奨学制度」は認めているようですね。
    アメリカのように、優れたアスリートが大学生くらいまで2つのスポーツで超一流である、そんなことはここ日本では夢のまた夢みたいですね。
    to あーちゃんさま
    結局、高野連がどんなにおかしなものか、高校野球がどんなに他のジュニアスポーツに比べて歪んだことになっているかが問題なので、それがぶっつぶれるためには、これで良いのかな…なんてのがちょっとナナメのいやらしい場所からの見方です。もちろんそれによって被害を受ける少年がいるのですが、明らかに高野連はそれを保護しようとしていますよ。次は、「じゃ誰が金を出すんだ」という現実的な問題になっていくのでしょうか。高野連、ぶっつぶれないかなぁ。
    to 蒸し返しさま
    独立リーグ、クラブチーム、NPBファーム組織…なんでもよいから高校野球レベルの野球ができれば良いんですよね。お金の問題は、日本中の「野球予算」を表に出してきちんとすれば可能なような気がする昨今です(笑)。
    to (まめ)たぬきさま
    顧問の先生は、本当に大変です。自分が社会人になって、中学高校の顧問の先生がどれだけ自分を犠牲にして、教育してくれたか本当にありがたく思っています。でももうそれは大昔の話。専門性の高い課外活動には金がかかるのだという前提でないとダメですね。
    to おんずさま
    特待生制度を解約できれば、5月中だけ対外試合禁止で、その後の夏の大会は出場できる。「野球特待生」制度はクロだが、「一般奨学」制度はシロだということで、逃げ道もそれなりにありそうに思います。高野連としては、「高校野球ビジネス」がやり玉に挙げられるのを避けたい一心なんでしょうね。私も高野連を支持する気持ちなど一つももっていません。
    今回、特待を解約せずに、辞退する高校が出てしまうというのも異常なことで、おっしゃるようにヤツラやヤツラはのうのうとしているのに、泣いている子どもがいるというのはおかしなことです。でもこういうことはいつの世にもあります。子どもにまったく責任はないでしょうが、すでに今後の人生に役立つ大きな恩恵は受けたと諦めて、せめて次のステップに活かて欲しいです。

  8. いわほー より:

    高野連の掲げる理念の基本となる「日本学生野球憲章」の冒頭にはこうあります。
    『われらの野球は日本の学生野球として学生たることの自覚を基礎とし、学生たることを忘れてはわれらの野球は成り立ち得ない。勤勉と規律とはつねにわれらと共にあり、怠惰と放縦とに対しては不断に警戒されなければならない。』(http://www.student-baseball.or.jp/kenshou/kenshou.html)
    えらく尊大で高尚すぎる時代錯誤の理念だと思えなくもないのですが、少なくともこの理念を掲げている以上、現状、私学に於いて平然とおこなわれている特待生制度という名の利益供与。そしてそのバーターとしての生徒集めの実態を容認することは認めがたいと思うんですよ。その意味では今回の通達はむしろ遅きに失した感があります。
    ただ、私も問題にしたいのは、今の理念を掲げる以上、それが当然だといっているだけなんです。このまま、現状の実態を追認するというのであるならば、高野連そのものを解体すべきだとおもいます。その上で、新たな組織・団体として、理念の根底から見直した上で出直すというのであるならば、それはそれで文句はいわないんですが。

  9. torao より:

    to いわほーさま
    今、ビジネスの世界では法令遵守していないと外部から攻撃される格好のネタになるため、「過敏」が常識になりつつあります。
    そこでは「でも現実は」なんていう口実が入り込めないような厳しさがあります。
    プロを頂点とした野球界は非常にその点にルーズだと感じざるを得ません。
    まず決めを守ること。それで水が清すぎて魚が住めないようなら、決めを緩めること。決めがあっても守らないのが当たり前では話にならない、私も思います。

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