プロ野球の過去未来(ホークス編)

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野球というスポーツの要素をいろいろと分解していくと、「過去」というものがとても重要であるということがわかる。


「投球間隔」というシンキングタイムを使って、配球、狙い球の予測、守備位置…そういった個々の戦術を選択する。その判断プロセスの大半は、現在置かれている状況と過去にあったこととを照らし合わせて、より好結果を導きやすい確率を求める作業に当てられていることだろう。それをベースに「ウラをかく」「ウラのウラをかく」「ウラの…(略)」となっていったり、逆にまったくの新発想を取り入れたりということになっていくわけで、いずれにせよ野球の戦術選択は過去に支配されているという言い方は可能だと思う。
当然見ている側も、意識しているしていないの差こそあれ、同じことが言える。長年野球を見続けている人の大半は、1球1球、次に捕手がどういう球を要求するのかをクイズ番組を見ているかのように予想しながら、やれ「そこじゃない」だの「弱気すぎる」だの言っている。それもほとんどが野球を見続けて来た過去の蓄積から判断しているのだろう。まあ何十年見続けていようと、所詮はただ見てるだけなので、その過去の蓄積もいい加減な保存状態でしかないから、判断自体もいい加減なものなんだけどね(笑)。
もちろんそんな面倒なことは関係なく、選手の「心技体」を楽しむも良し、スタジアムそのものを楽しむも良し、どんな楽しみ方もアリなのだが、ずっと見続けることで、楽しみ方がより豊かになるというのはあると思う。
その1球1球に、過去との関わりを続ける作業は、やがて思い出の蓄積に繋がっていく。記録&記憶、シンキングタイムの積み重ねが、野球を「思い出のスポーツ」や「ノスタルジックなスポーツ」にしていく。
これまで日本プロ野球は、衰退が叫ばれる中でもがいて、焦って、わけがわからなくなっていた。どうしたら子どもや若者、女性を取り込めるか。その答えを、ありとあらゆる流行に求めようとして、右に行ったり左に行ったり、逆立ちしたりして見た。その効果は少しずつ出ているようでもあり、まったく関係ないようでもあり、モノによっていろいろなんだろう。しかし一つ忘れていたことに気付きつつあるというのは言えるようだ。
野球界が常に羨ましく思ってきた、外界のありとあらゆる「清新な流行」の多くは、やがて根づくことなく消えていったり、簡単に形を変えていったりするのである。流行から定着へ、そして伝統へ。「流行」の側から見れば、歴史と伝統があるということは羨ましいことなのだろうと思う。
6月6日、甲子園で行われたタイガース対ホークス戦で、ソフトバンク・ホークスは、前身である南海ホークス時代のユニフォームを着て戦うというイベントを行った。かつての本拠地に近い甲子園球場には、古い南海ホークスファンが多く集まった。
あちこちでその時の様子を知るにつけ、プロ野球界が見落としてきたもの、再発見すべきこと、普段からやっていかなければいけないことを改めて考え直す機会を得たような気がした。
週刊ベースボール、綱島理友さんの連載コラムでイラストを書いているグラフィックデザイナーrockwellことイワヰマサタカさんは、綱島ボブルヘッズ(関西)の仲間。古くからのホークスファンだ。今回アップされたスペシャルコンテンツの中の一文を読んで、大阪のホークスファン、古い南海ファンの皆さんが、どれほど感激されたかわかって、こっちまで胸がいっぱいになる(一部抜粋、ぜひ全文を読んでね)。

選手個々はソフトバンクホークスの選手だ。だがそんな事はこの空間では関係なかった…。
俺たちの南海ホークスが還ってきたんだ…。
試合が始まると「ここは大阪球場のライトスタンドか?」と錯覚を起こした。

こういうイベント一つだけを取り上げて、過度に騒ぎ立てるべきではないとは思う。しかし、まったく自己主張のないような南海ホークスのユニフォームは、私に優しく囁いているように思える。あくまでも落ち着いた深い緑色、あくまでもシンプルなデザイン。この格好良さが「価値とは何か」を語っているように思えて仕方ない。
この話つづく。

コメント

  1. メル より:

    交流戦は見慣れないユニが多くてTV見ててもややこしいなぁ。と思っていたのですが、リンクの「スペシャルコンテンツ」読んで涙が出そうでした。
    >普段行きたくない球場のひとつである甲子園が、
    ああ、そうなんですか・・・。がくっとしつつ。
    >選手応援歌がすべて1988年の主力選手の応援歌に差し替えられていたからだ
    これは、すごいですね。著作権がどうのこうのと言ってる阪神ではできないことなのでは・・・。
    昨日のラジオでは「関東中のホークスファンが神宮に来たかとような盛り上がり」と言ってて観客も5/25(日曜)の楽天戦につぐ大人数。日曜のロッテ戦をも越えてました。

  2. ジジィ より:

    プロ野球、私の中ではやはり「ノスタルジックなスポーツ」ですネェ。
    不思議と「強い今」よりも「弱かったあの頃」のほうが楽しかったような…
    ホークスやマリーンズも「暗黒時代」があったからこそ、今の熱狂的ファンが在るのかなあと…
    話しはそれますが、ベイスターズのファンも「今」頑張って応援して欲しいですね。我々の「暗黒時代」はCSも無く、実質6月から消化試合でしたが、今は3位→CS→日本一の可能性が残るだけでも応援のモチベーションを保てるのでは…
    我がタイガースも今季は「完全制覇」のチャンスですが、これを達成してしまうと、人生の目標を一つ失うようで正直少し怖いです…(多分若い人には理解できないでしょうけど)

  3. まつたか より:

    大学のとき、初めて使った彼女が南海ファンだったのを思い出しました。
    森脇選手のファンでした。
    6月6日、レフトスタンドから聞こえてきた佐々木誠のテーマ、2人で行った藤井寺球場でも流れていましたっけ。最近ホークスの試合はあまり観ていなかったので、普通にあのテーマを今でも使っているものだと思っていましたが、あの日限定だったのですね。
    ヘンなこと思い出しちゃったなあ。
    あぶさんでもあの日のエピソードをマンガにしていましたね。

  4. いわほー より:

    ファンは「復刻ユニ」にプロ野球史とともに自分史のノスタルジーに浸れるんでしょう。
    タイガースが先鞭をつけた交流戦の「復刻ユニ」イベント。斬新なことを極端に嫌う「阪神の伝統」を覆すエポックメイキングなことだったと思います。
    交流戦に限らず、レギュラーシーズンに戻っても「G?T60年代復刻ユニシリーズ」なんて企画も織り交ぜれば楽しいんじゃないでしょうか。「大洋ホエールズユニ」のベイスターズとの対戦なんかもいいなあ。始球式にシピンを招待するとかして(笑)。

  5. ばかぼん父 より:

    Kaleidoさんのところで紹介されていたCaster先生のコラム
    も相当良いです。
    http://caster.blog.ocn.ne.jp/caster_blog/2008/06/post_1c2c.html
    「復刻ユニ」を素晴らしいイベントにしたのは
    応援自体も復刻した応援団のGJですね。
    今度京セラでまたやるようですが、お相手の
    合併球団は「復刻ユニ」をやりたくてもできない。
    合併より身売りの方が何倍も救われるってことでしょう。

  6. ichiken より:

    あのホークス復活の企画は粋でしたね。
    子供の頃、緑の帽子をかぶって大阪球場に行ってたんで懐かしかったです。
    タイガースのボヤァ?ユニが、全体の空気に水を差してた気がしましたが…。

  7. 一虎ファン より:

    大好評復刻ユニのホークスか、不評だらけの「ぬりえ」ユニのウチか、どちらが交流戦を制するのでしょう。
    勝てばカッコ良く見えるなどと自分に言い聞かせながら見ていますが、いつまでたっても、好きになれません。

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