欲望

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 欲望とは人間の本能に具わっているものであり、自然でごくありふれたもの。個体の生存や安全のために、あるいはDNAの保存のために働くなどと言われている。


欲望自体は生物的にありふれたものなのに、社会が高度に組織化されると欲望自体も複雑になってくる。個体だけのものでなくなったり、生存や安全のためだけでなく、もっと些末なところにまで欲望の影響が及ぶようになったりする。すると、高度な社会では、ごくありふれたものにすぎない欲望に、何か高度な意味を与えたくなる。「欲望=エネルギー源」とか「欲望=罪」とか、そういう風に。
 今、私が「欲望」という言葉からまっさきにイメージするものは「カネ」である。でもよく考えたら、ずいぶんと突飛な話ではないか。もし私がジャングルで10人程度の群れで原始的生活をしていたら、「欲望=カネ」なんて思いもしないだろう。高度な社会に所属しているから、カネがあればあれやこれやが実現できて、その結果自分の生存や安全、DNAの保存に繋がる。社会とともに欲望は変化して来て、今現在は「欲=カネ」の時代だのだろう。
 そういうカネへの欲望や、物欲に比べたら、「名誉欲」というのはもっと原始的な本能に近い部分にある欲だと思う。他者から尊敬され、高い価値を有すると認められることは、直接的に個体の生存や安全、DNAの保存に繋がる。もちろん社会が高度化する中で、その欲望も複雑化し、「誇り」「誉れ」「プライド」という美徳に変化してもいる。
 と、まどろっこしすぎたが(笑)、原辰徳ジャイアンツ監督がWBC監督を快諾したことへの賛辞なのだ。「リターンの割りにはリスクが大きすぎ。カネにならないどころか、メシのタネをも脅かす」これが現代社会に生きる多くの「監督候補」のホンネだろう。だから原監督は、よくぞ名誉を取ってくれたと思う。本来は名誉も「欲」なのだが、このカネ至上主義の時代に、カネと名誉を秤にかけて、名誉を選ぶなんてつくづく「無欲」に思える。
 だいたいプロスポーツなんてものは、原始的欲望に近いところでプレーしているから、原始的欲望に憧れる観衆が熱狂するものなのだ。素直にカッコイイ!と思うのは、そういう原始的な姿。そんな姿に畏れを抱き、その崇高さに平伏すのだ。
 本当のところがどうかなんて、一般民間人にはわからないが、原監督には誉れ高き紳士という風があり、名誉のために生きるというイメージがある。もちろん結果責任というのも重いが、そこらへんにファンから受け入れられなかった星野監督との違いがあるように思う。
 ただね、業界全体の「高度な欲望」自体にどんな変化があったのか、なかったのか。そこらへんがまだまだちゃんと見せられていない。ゴタゴタを見る限り、なーんも変わらぬ「カネ至上主義」のままであると多くのファンは見ていると思う。加藤新コミッショナーにまず求められるのは理念をぶち上げることではなかろうか。

コメント

  1. 一虎ファン より:

    原監督がどんな思いで代表監督を引き受けたのかは知り得ませんが、野球組織的にも、時間的にも、世間的にも、もはや断ることのできない状況だったのではないでしょうか。
    なにはともあれ、日本代表の真剣勝負なら、私は心から応援します。

  2. fun より:

    第一ラウンド主催の読売の人間であり、王さんからもお願いされる。
    こういう状況では原監督でなくても誰も断ることはできなかったと思います。
    「押しつけられた」「断れなくてかわいそう」というのが世間の人の
    正直な感想ではないでしょうか。
    だから、もし結果が悪かったとしてもあまりたたかれない気がします。
    原監督のさわやかさでWBC監督=名誉職というイメージに変えてもらいたいです。

  3. 通りすがり より:

    通説として自己実現の欲求(名誉欲)は、欲望の最終段階と言われてますよ。最も原始的とか言うとちょっとまずいと思われ。
    マズロー 欲求 5段階 あたりでググって見て下さい。

  4. torao より:

    通りすがりさん、ご指摘サンクス。浅学ハズカシ…ちょっと、まずローでした(笑)。
    学説にさからうのもなんですが、私にはカネへの欲ってってのは「自己実現」の歪曲形に思えます。カネさえあれば何でもできるっていう考えなんてそうじゃないのかな。で、名誉欲は「自己実現」ではなくその前の4段階目「自我欲求」だと思うんです。ボス猿システムってのは暴力を背景にしているから、名誉欲とは違いますが、子分の方は尊敬もしているように見えるので、なんとなく「名誉欲」に近いものを感じるのです。そんなんで原始的(ちと大げさだった)となっちゃったわけ。以上言い訳(笑)。

  5. 西田辺 より:

    前回優勝国、メジャー参加、国内球団のテンションの低さ。
    プレッシャーや結果への対価・代償・評価を考えても、割に合わなすぎる役割。
    決まったからには、機構・各球団とも最大の協力はしてあげて欲しい。
    普段、「球界を挙げて」なんてやらないんだから、こんな時くらい
    力合わせてくれませんかねぇ。
    ここはお互い欲や得を捨てる覚悟でやらないと恥だけかいて終わって
    しまいそう。

  6. ばかぼん父 より:

    原さんは第3回が良いと思ってましたが、なっちゃった以上、今回アジアラウンドで敗退したとしても連続でやって欲しいくらいです。彼は失敗を糧にできそうですから。もちろんチームをまとめ、選手達から信任されればの条件付きですがね。
    まだまだ球界=読売ということらしいので、「球界あげて」というのには全くノれませんが、スポーツの現場と政治は別。
    WBC日本代表は無条件で応援します。