理屈と感情

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 ああ、緊張感から解放されて、のんびりした気分。でもやっぱり退屈。


とか言いながら、いざ金曜くらいになれば、ああ明日からいよいよクラシリだ、ああドキドキ、ああどうしよう、このままずっとやらなきゃいいのに…などと思ってしまう。頭と心と体がバラバラなんだよね(笑)。
 岡田監督辞任の報に触れた時もそれに似ている。頭で考えること、心に去来する思い、体の反応、それぞれ違う。理屈と感情は一致しないことが多い。
 クライマックスシリーズという制度も多くの人にとってそうなのかも知れない。理屈としては理解できるのだけれど、なぜか感情の部分で納得できない。心がついていかない。という声を多く聞く。
 それは無理からぬこと。だって体に染みこんでしまっているから。春から野球シーズンが始まって、秋には6球団の頂点「リーグ優勝」が決まる。この半年あまりのシーズンにいろんな思い出が詰まっていて、そのフィナーレに一気に感情を爆発させる。それが終わると、優勝2チームによる12球団の頂点「日本一」を決める。このリズムが体に染みこんでいるから。そして染み込んだのはリズムだけでなく、価値観もあるのだと思う。
 2リーグに分裂して、それぞれが6球団ずつという形になって長い。分裂後のことしか知らない野球ファンも多い。私もそう。優勝とは6球団の内の1番になること。日本一へのチャレンジはご褒美。おそらく多くの野球ファンにはこの価値観が染み込んでいる。これは理屈ではなく、体が覚えていることなのだと思う。制度が長く続いたことで出来上がった価値観。
 参考にしたモデルであるはずのMLBでは、地区優勝にどれほどの重きが置かれているのか、現地のファンではない私には想像できないのだが、見ている限り「記録」としての重要性はあっても、その後のプレーオフの熱気の中で「ワールドシリーズに出場してこそ」あるいは「ワールドチャンピオンになってこそ」という価値観に圧倒されていくように見える。
 そして数年のパのプレーオフ、そして昨年からのクラシリセ・パでも同様の価値観が生まれ始めているのは自明。しかしその価値観が、従来ファンや選手たちの体に染みこんでいる価値観と葛藤しているのが今の時期なのかもしれない。理屈ではわかる、だけど心と体がついていかない。そんな感じ。
 もっとも他の競技団体のシステムと比較して、6チームの内、3チームに出場権があるという予選としての「甘さ」や、決着が付いている勝負をもう一度やり直す「二度手間」に問題があるという指摘は当たっている。現行システムが、全12球団の頂点を決めるやり方として、もっとも優れているとはとても思えない。これは2リーグが組織として交戦状態にあったという歴史的背景による部分が大きいが、昨今パワーバランスの微妙な変化により、ようやく協調の方向性が見えてきた。もっともっと面白くするシステム改良は常に続けていって欲しい。
 そんな頭と心と体がバラバラな時代のクラシリなのだが、やっているうちにだんだんとマッチしてくるものだと思う。6分の1より、12分の1に注目が集まるということは基本的に良いことだと思うし。
 まあそんなことでタイガースには何の迷いもなく、12球団のトップを目指して邁進して欲しいと願う次第なのだ。

コメント

  1. メル より:

    まったく反対の視点でも、同じ結論です。
    昨年のGの優勝、クラシリ敗退を野球に興味が薄い人は覚えていないようです。日本一が新庄?みたいな会話(ちゃんと訂正してあげます)をしていると、一般人にとってはペナントレースより日シリ重視。というか、なんか話題性があれば見るってのかも。娯楽のバリエーションが増えた現在、プロ野球もやっぱり「日本一」にならないと一般人には話題にはならないのかな。と実感している今日このごろ。東京でも先週末はビックカメラのCM以外は気にすることなく生活できました。それにしてもいつも見てないサッカーを昨夜ラジオで聞いてたけど、「マイナスのボール」なんて単語わからない。笑。はやく野球が見たい、聞きたい。

  2. 蹴舞 より:

    前もここでお話したかもしれませんけど、もう一度・・
    【ページシステム】←ウチが支持してる方式
    http://set333.net/puro18pureiohu.html
    現行の制度がイマイチ盛り上がってないのは試合数が少なすぎるし、間隔が空き過ぎてるからの様に思える。一ヶ月間丸々楽しめるような制度にすれば、もうちょっと世間の気を惹く事ができるんじゃないのかなぁ・・
    あと、これとは別に日程の件だけど、パ・リーグはどうしても開幕日をセ・リーグとずらしたいみたいなのでしょうがないけど、最終戦はシーズン中の日程を緩くしてセ・リーグと同じにできないモンかねぇ? いつまでも調整が難しいとかいう言い訳は聞き飽きたよ。

  3. 一虎ファン より:

    蹴舞さん、ためになるサイトのご紹介、ありがとうございました。たいへん興味深く読ませていただきました。
    「ポストシーズンゲームの是非を論じるより、どんなポストシーズンゲームが望ましいのかという議論のほうが発展的です。」のくだりには「目からうろこ」でした。
    ヤキュ中患者としましては、ガチンコ試合を一試合でも多く見られたら、それに勝る喜びはありません。

  4. いわほー より:

    私もやっとこの頃、クライマックスシリーズの肯定的な意味づけができるようになりました。
    もう、この際「レギュラーシーズン」と「日本シリーズ」は完全に切り離してダブルスタンダードでいいじゃないかと。そう考えると日本シリーズ優勝>リーグ優勝という価値観も意味がなくなる。連盟は過去の日本シリーズとは別物であることの啓蒙活動を積極的に行うべきだ。そのためにも、いっそ名称も「日本シリーズ杯争奪戦」か、そのまま「クライマックスシリーズ杯」とすればいい。そう割り切って考えると蹴舞さんが紹介されているリンクサイトのような自由な発想が生まれてくるし、レギュラーシーズンとは別物の面白さも生まれると思うのですが。

  5. クリキントン飛雄馬 より:

    阪神タイガースの歴史的V逸で、自分も、脱力感いっぱいで、CSなどは、どうでもいいと思ったりしてましたが、今日のtoraoさんのブログを見て、今日から気持ちを切り替えることにしました。
    中日に2勝、巨人に4勝しましょう。そして日本一です。
    今日は、23年前の思い出の21年ぶりのリーグ優勝を決めた。
    10月16日です。

  6. torao より:

    いわほーさん、クラシリの名称を公募していた時、私は「日本選手権予選」で応募しました。やっぱり漢字の方が威厳があってカッコイイじゃないですか(笑)。
    今年のセパレギュラーシーズンを見ていて、消化試合が減ることの素晴らしさを痛感しました。プレーオフ導入でレギュラーシーズンの価値が低下するという意見もありますが、実際は試合の質が向上し、逆に価値を高めていると思うのです。

  7. いわほー より:

    そういう意味では別物だ何だと線引きするよりも、そのあたりを曖昧にしておいたほうがファンもリーグもハッピーかも知れませんね。都合よく解釈できる余地が生まれて。今回のタイガースなんかもレギュラーシーズン終戦時に立ち直れないほどのショックがなかったのはクラシリがあったからだと思うし、それでクラシリで負けても、ある程度の覚悟はすでに備わっているし。

  8. マイノリティ より:

    ディレクトリにアクセスするなどは、8球団時代や国民リーグを知っている私の対応力を超えています。
    少数民族の一意見を書いてみただけで満足です。
    今後も愛読、クリックさせてください。

  9. レフトの子虎 より:

    何だかんだで、みんな野球が好きなのです。
    野球狂の国なんです。
    なので、選手やMPBに求める事はとにかく「レンシュウ」です。(レンに力を込めて)
    特にタイガースは、2ストライクまで見送ってから球にバットを当てにいくレンシュウじゃなくて、初球からバットしっかりを振り抜くレンシュウを!

  10. 西田辺 より:

    確かにプレーオフ?クライマックスシリーズと言う流れは予想以上の盛り上がりも見せたし、このイベントに異論を挟むつもりはないけど
    「日本一」と言う称号に違和感を感じてしまう。
    例えばの話、借金2桁の3位同士の日本シリーズも有り得る。
    そこで覇を争う事に日本一を名乗る価値があるのでしょうか?
    チャンピオンの価値が薄い競技は、やがて衰退を招く。
    岡田監督はリーグ優勝を逃した事の責を辞任と言う形でとった。
    それほどまでにリーグ優勝は重い。
    カップ戦他、改善の余地はまだまだ残されているはず。