春の金武まつり

スポンサーリンク
定期投稿

楽天のキャンプ地、金武町に乗り込んだ対外試合初戦は大勝。しかしそもそも試合の目的が違っていた。

投手については同じで、どちらも戦力拡充のためのチャレンジが主だったが、野手についてはやろうとしていることの違いが出ていた。楽天の先発は一軍ボーダーの選手が中心で、レギュラー級は小深田のみ。戦力を拡充させる候補者を探し出すための試合だった。一方の阪神は、その作業は先の2日連続紅白戦で終わっていて、この試合以降は主力級やポジションを固定している選手たちの「腕試し」や、ボーダー選手たちを一軍からふるい落とすための試合だった。

放送では、試合前に実況アナと解説者が休憩時間となり、カメラを固定した引き映像で阪神のシートノックの様子が流れていた。遠目かつ中途半端なアングルのため、個人識別はできないし、全体は見えないのだが、いつもどおりカットマンが正しい位置に入り低く強い送球で中継プレーをしたり、力強く無駄のないゲッツーを行ったりする様子や、元気な声は伝わってきた。たぶんだが、あのビシッとしたシートノックで、すでに圧していた可能性がある。

打線爆発や大量得点もうれしいことだが、ふるい落とし対象の選手たちがひとりも落ちなかったのが大きい。

特に投手たちが踏ん張った。先発した桐敷は3回を投げて被安打2、与四球1、奪三振3。右で打った田中和に本塁打されたが、高い飛球が強風に運ばれたものだった。右打者の外角低めにいい速球が決まったため、緩急をつけられていた。

二番手の侍・湯浅はまだWBC球とケンカしている状態だったが心配なし。

三番手の岩田は3人ピシャリ。しっかり腕が振れていた。

四番手村上は代わった6回こそ先頭を四球、ヒット、四球で二死満塁のピンチを招くも安田を三邪飛に抑えて無失点とすると、7回は三者凡退、8回は先頭小郷のピッチャー返しがお尻を直撃し内野安打で出すが、痛みもなんのその後続を落ち着いて打ち取り3イニングを無失点で投げきった。速球も走り好内容で、こちらも残った。

五番手は岡留が危なげなく三者凡退。変化球を低めに制球できていた。

守備では、1回ウラ先頭平良の平凡な遊ゴロを、木浪が普通に捕球して普通にステップしてから一塁へ高投。次打者小深田の右中間の当たりを板山がファインプレーでキャッチしたため、傷は拡がらなかったが、先発投手の足を引っぱる先頭エラーはいただけない。他に記録に残らないものも含めエラーはなく、二死一二塁で太田のセンター前に抜けようかというゴロを横っ飛びキャッチから素早く二塁封殺した中野、茂木の頭を越しそうなゴロをジャンピングキャッチして一塁で刺した投手岩田、タイミングよくジャンプしてライナーを捕った小幡といったファインプレーがあった。

打つ方の大量得点は楽天投手陣ガタガタの追い風参考だった。現に、楽天三番手、左の佐藤には1.2回、四番手やはり左の藤井にも7回につかまえたものの5回、6回は三者凡退、8回の鈴木、9回宮森といった主力クラスからは得点できなかった。

とはいえ、ローテ入りを狙う先発高田孝を崩したのは1番島田の完璧なセンター前クリーンヒット、2番中野の四球、3番板山の左中間突破2点タイムリーの速攻があってこそ。すでにここまでで、打つべきでない球をきっちりと見送り、打つべき球をしっかりとらえることができたため、投手が自信を得ることなく崩れ去った。もちろんセンター右へタイムリー二塁打の輝明、またしても完璧ドカンの原口も見事だった。

髙山にライトフェンス直撃の二塁打、さらに「らしい」粘り打ちのセンター前も出てマルチヒットとなったのはホッとしたことだろう。これがきっかけになると面白い。

もうひとり「ふるい」の打席を与えられた井上も代打で特大のスリーランホームラン。初球の甘い変化球を逃さずぶちかましたのはデカい。残った。

なんというか懐かしささえ覚えたのが、この試合で見せた岡田監督の選手交代。投手の順番とイニング数にもそれぞれしっかりと意味を感じる。
4打席を終えた大山に代えて6回ウラから森下をライトに入れ、板山を一塁へ。守備から入れることで新人を試合になじませる。板山には結果を出し続けねばならない重圧を維持する。

左の藤井に抑えられて無得点が続いていた7回表、無死一二塁となり9番木浪には代打渡邊諒を送る。ポテン中前で無死満塁となり、島田がセンター左への犠飛で久々の追加点となったあと、一死一二塁で、2番中野はお役御免で、代打井上。本人にも「チャンスなら」と予告した上で打席に送ると、見事初球ホームランで応えた。公式戦とは状況が違うが、ボーダーの選手にボーダーならではの役目を与えた。

どうってことないようで、「さすがやな」と思ったのが8回の選手交代。8回表、DHの原口に代打植田を出すと、そのウラからDHを解除して植田をセンター、続投の村上をセンター島田に代えて1番に入れた。それで9回表、打順が1番投手に回ったところで代打糸原を送る。まあ当たり前のことなのだが、本当にこういうところ間違わないよね、この監督。リザーブ捕手で連れて行った中川以外、予定どおり使い切って、見るべきことを見たことだろう。

コメント

  1. 虎ジジィ より:

    素晴らしい長文コラム(描写)に書くコメントも見つかりません。

    「金武祭り」あくまでも勝敗は無関係な練習試合ではありますが大勝は気分が良いです。

    3回までに12得点も取った打線も凄いけど、
    何よりも称えるべきは、
    そんなゲームの中でも田中の「風ムラン」の1点だけに抑えた投手陣が素晴らしい。

    ファーム選手権のリベンジをかけた桐敷〜岡留まで、期待される当落線上の投手がそれぞれの持ち味を発揮した素晴らしいリレーでした。
    強いて言うなら湯浅がWBC公式球にやや苦戦し「抜け球」が多く見られましたが、これは本番までには修正出来るでしょう。

    打線はみんなが活躍した感じですが、アピールを続ける板山は勿論、これまで良いところの無かった髙山も結果を出せたのは良かった。
    3打席連続タイムリーの佐藤輝は2005の今岡が乗り移ったような打撃だったし、
    前回軽打ヒットで岡田監督からダメ出しされた井上の「あわや場外」の一発は圧巻でした。
    注目の森下は、その井上の直後の打席だったので かなり力んでいたのは印象的、慣れて普通にスイングすればヒットも出るでしょう。

    いろいろ試せて、練習試合としては申し分のない内容でした。

  2. 西田辺 より:

    3回までに12点とか、一体どこのチームかと(笑)
    キャンプ始まって、シート打撃や紅白戦で阪神投手陣のボールを見続けて
    きた打者陣にとって、昨日の投手は容易かったのかも。
    何より感心したのが、低めに沈む誘い球に殆どの打者が対応できていたこと。
    一線級が出て来ればどうなるかは分からないけど、打つべき球をキッチリ
    絞り込めていたのではないでしょうか。
    公式・非公式含めると、2008年のCS対中日第2戦以来のタイガース監督と
    しての勝利。
    マスコミ向けには「まぁ、あのピッチャーならこうなるよ、お~ん」とばかりに
    喜びを露わにはしていないけど、第一歩としては上々のスタート。
    開幕すれば、守る場所がないかも知れない板山・原口がとにかく元気。
    昨日たまたまではなく、日々の練習の段階から状態の良さを伺わせている。
    このまま、シーズン通しても良い意味で監督を悩ませる存在でいて欲しい。
    本文にもありましたが、交代選手の配置の的確さは健在でしたね。
    「軍師 岡田彰布」の本領発揮か。
    今のプロ野球、キャンプ初日から紅白戦をやったりと、実戦を早める傾向に
    ありますが、それが必ずしも良い事ではないというのは、昨日の試合で証明
    出来たのではないでしょうか。
    シッカリとチームの完成度を高めて実戦に入るのも悪くはない。
    昨日からうるま組のドラ1森下と2年目中川捕手が一軍合流。
    私が密かに次世代正捕手と期待している中川が、岡田監督の目に留まったのは
    非常に嬉しい。
    昨日出番はなかったけど、きっとどこかで爪痕を残せるチャンスは来るはず。
    昨日の金武への出発前の映像で、スローイングの腕の角度が横振りになっていた
    のが気になりましたが、直ぐに嶋田宗コーチに指摘されて修正してましたね。
    とにかく、キャッチングと打撃は良いものを持ってる中川。
    この実習期間にポンポンと階段を駆け上がって欲しいですね。

    • いわほー より:

      ブルペンで岩崎の投球を受けていた見慣れない捕手のしっかりしたキャッチングぶりに、誰だろうと見ていたら、高卒二年目の中川捕手だったんですね。
      京都国際で甲子園に出た時もキャプテンシーあるキャッチャーとして話題になってましたが、プロ二年目にしてしっかり成長しているようで、とても楽しみな捕手が出来てきましたね。

  3. とらかっぱ より:

    試合全編は観れていませんがこのコラムを読んだだけで丸々一試合観戦してたかのような気になれました。ありがとうございます。

    目的が違うチーム同士の対戦とはいえ大勝は気分がよいです。やるべき事をやって、やってはいけない事は極力やらない。高い目的意識と集中力があってのことだと思います。良いキャンプが送れている証ですね。

    当落線上の選手に注目していますが、かつてのドラ1vs6位の同期対決が熱い。持てる才能を発揮できず燻り続ける天才打者とヤル気とモチベの高さはあるもののゲームになるとカラ回りしてしまうユーティリティー選手。昨年岡田監督が就任した時にはレギュラー候補ではなかった二人がバチバチに意識しあって開幕スタメンにまで昇っていれば、チーム力は確実にアップしていると思います。これからも熱いアピールを期待しています。

  4. より:

    >まあ当たり前のことなのだが、本当にこういうところ間違わないよね、この監督

    まさに「非凡の凡将」
    あとはチームが苦しい時に采配でも「むちゃくちゃしたれ」が出来るようになっていれば第一次政権から大きなプラスになると思うのでそれも楽しみにしています(そもそもチームが苦しくならないのが一番良いのですが)

  5. 岩修 より:

    練習試合なのにtorao様の見事な長文と素晴らしい皆様のコメントにお腹一杯、胸一杯。
    原口観てると2016年の時より凄味が増して円熟期到来と思った。
    皆バチバチ火花散らしながら躍動するのは嬉しいけどペナントレース本番でバテないか凡人は心配になってしまう。でも、哲様が言われた様に今年から非凡の凡将岡田監督だから大丈夫と何故だか安心している自分がいる。

  6. 虎轍 より:

    采配がどうのとかではなく、選手の起用が試されると思ってましたが、私の想像のかなり上をいく第二次岡田監督の対外試合一発目でしたね。
    選手の起用の仕方もばっちりで去年なら「なんでそうせえへん?」って事をきっちりしてくれてましたね。
    野球が大好きやから出来る起用法やと思いますし、選手を解ってて、そこのピースをはめていくかのような起用法ですね。
    あとは起用された選手が結果を出すだけなんですね。
    練習試合でも勝ちに感謝!
    疫病退散!
    頑張ろう日本!